前回の記事に書いた通り、学校給食あり方検討委員会で作成された最終答申は私たちの思いはあまり反映されないものになってしまいましたが、答申に入ったものとして、中学校給食の医療的ケア児の胃ろう食対応(ミキサー食)があります。
相模原市では自校方式の小学校での医療的ケア児の胃ろう食対応が始まり、徐々に対応数が増えている所です。
中学校給食はセンター方式に決まりましたので、センターでのミキサー食対応が求められます。自校方式と違う点はその学校に対応する栄養士、調理員が校内におらず、離れたセンター施設にいる為に連携を取りにくい点にあります。
また、ミキサー食対応が始まってからまだ日が浅い為に、対応方法が担当職員の経験・知識に頼らざるを得ない事です。
例えば、ある小学校で胃ろう食対応をすることになり、初めは全混ぜ(ご飯もおかずも全て一つに混ぜたものをミキサーにかけて提供)だったのですが、それでは良くないと言うことを保護者が時間をかけて担当職員に説明して、一品ずつミキサーにかける対応に。そしてさらに栄養士が代わり、さらに見た目もそのメニューに近づけたものを提供して下さる事もある対応になったそうです。
その一方で全混ぜ提供の学校もあるようです。
胃ろう食のお子さんは口から摂取しない、つまり味がわからないから全混ぜでいいのでは?と思うかもしれません。
しかし実際はお子さん1人ひとり違いますので、口から少しなら食べられる子、舌に乗せたり匂いを楽しむ子など様々です。
口から食べずに胃や腸に注入しても、そこから上がってくる匂いで味を楽しんでいるそうです。
「ほうれん草を注入したら青臭くて好きじゃないみたい。」
「いちご狩りに行った時、イチゴと練乳を“もっともっと入れて!”と訴えた」
と言う話も伺いました。
医療的ケア児と触れ合う経験のある人はおそらくそれほどいないでしょう。そして、触れ合ったことがないと、何も話さない彼らは何も感じることができないと思ってしまうかもしれません。
しかし、触れ合ってみると、彼らはとてもおしゃべりで、たくさんのことを考え、周りのみんなとの外出を楽しんだり、工作を嫌がったり、暑い寒いを訴えたりしています。ケアが必要な点以外はほとんど他の子どもたちと変わらないと言うことがわかります。
「どうせ味がわからないだろうから」と全てを混ぜた食事を大人が与えているのを見たクラスメイトはどう思うでしょうか。
「医療的ケア児は味がわからない」とインプットされるのではないでしょうか。
先に述べたように、医療的ケア児であってもさまざまなことを感じています。もちろん、味も感じることができます。
アゴラさがみはらへの寄稿の中で私たちは「本当の意味での『みんな』の給食」についても書かせていただきました。
「□□さん、今日の唐揚げは美味しいね」
「あ!今日は◯◯くんの好きなデザートがあるよ」
隣で一緒に給食を楽しむお友達からこんなふうに声をかけられるのが当たり前であってほしいです。
アレルギー対応食もない選択制デリバリー給食を10年以上も続けてきた相模原市が、やっと全員喫食の給食のために動き出しました。
やっとなだけあって「早期実現」を重視して進めています。
「早期実現」も大切ですが、せっかく新たに始めるのですから「全員」の意味をしっかりと考えた上で進めていってほしいです。
↑東京都のガイドラインの表紙 一品ずつミキサーにかけられた食事
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