12月8日に中学校デリバリー方式の給食で、有機的栽培方法で生産された市内産のお米が提供されました。
お米の提供と共に、生産者さんの「有機的栽培方法の取り組みについて」の動画が中学校に配信されました。しかし、その内容に疑問や問題があると私たちは感じ、以前こちらのブログにも書きました。
「有機農産物の長所」として、「①健康によい(栄養価が高い) ②おいしい」 ということを生産者さんが子どもたちに伝えようとしているようですが、学校給食課に確認したところ、
有機農産物が、慣行農法で栽培された農産物と比較して、「健康によい(栄養価が高い)」や「おいしい(作物本来の味がする)」というエビデンスはありません。
という回答をいただいていました。
では、動画はどのように編集されているのか?この部分はカットされているのか?と気になったので、配信された動画の視聴の要望を学校給食課に出し、1月24日に市役所へ出向き、動画を視聴させていただきました。
学校給食課の窓口へ伺うと、同じフロアにある会議室を用意しておいてくださり、動画の再生方法などを教えていただき、会議室には私たちだけがいる状態で視聴させていただきました。
5分ほどの動画が5本。タイトルは以下の通り。
- 米作りの紹介
- 有機農業の長所
- 有機農業の難しさ
- 稲の多年草化
- SDGs
この動画を毎日1本ずつ生徒に見せるよう各学校へ配信したそうです。
今回給食で提供されているお米は「無農薬」ではあるものの、有機JAS認証を受けていないため厳密には「有機米」とは言えないということも学校給食課に確認済みです。そのため、発表資料等には「有機的栽培方法」という表現がされていました。でも、動画のタイトルには「有機農業」と記されており、学校給食課と生産者さんとの間での確認が甘かったのかな?と感じずにはいられません。
動画の中にも「有機栽培」「有機農業」「オーガニック」という文言が文字でも音声でも何度も出てきます。これが法的にどうなのかを判断するだけの知識を私たちは持ち合わせていないのですが、かなりグレーな雰囲気を感じていますので、そんなグレーなものを学校教育の場に持ち込んでいいのか?という疑問を持ってしまいます。
私たちが最も問題と感じた「有機農産物の長所」は2日目の動画でした。
生産者さんがFacebookに投稿していたプリントがそのまま動画に使われていました。さらに生産者さんから「有機農産物は栄養価が高いということが科学的にわかっている」というお話もあり、視覚的にも聴覚的にも「有機農産物は栄養価が高い」という事が伝えられていました。
しかし右下に注意書きが。
※「栄養価が高い」「おいしい」などについては、小川さんの田んぼで育てたお米について生産者ご自身として評価したものです。
有機農産物のすべてに当てはまるというデータはありません。
いやいやいやいや、生産者さんのお話は明らかに「有機農産物全体」を指して「栄養価が高い」とおっしゃっていました。給食の時間に食事をしながら観る前提で撮影されている動画で、右下に注意書きを入れたとしてもそこまでしっかり読む生徒がどれほどいるのでしょうか。声だけを聞いている生徒もいるのではないでしょうか。「注意書きがあるからセーフ」と判断していいのでしょうか。
私たちはこの部分に関しては「完全にアウト」だと感じました。
相模原市が6月に出したオーガニックビレッジ宣言の市長メッセージには
有機農業や慣行農法といった違いに関わらず、お互いの農法を理解・尊重することで、農業者や関係事業者、地域が一体となって取り組む有機農業の仕組みづくりを目指し、相模原市有機農業実施計画に基づき、「オーガニックビレッジ」の取組を進めてまいります。
とあります。慣行栽培と比較して、有機栽培の農産物が優れていると発信することは慣行栽培を否定しているとも捉えられます。
有機栽培の農産物に関してエビデンスのないことを発信することは有機農家の方も批判しており、今回の動画の内容は有機農家同士の対立をも産みかねないものであり、「農業者や関係事業者、地域が一体となって取り組む」という宣言にも反しています。その点でも「アウト」です。
生産者さんが動画の中でも紹介している「緑の食料システム戦略」は、環境に配慮し、食料・農林水産業の生産力を上げ、持続可能性を高めるために策定された方針です。
環境負荷等への配慮として有機農業の拡大を目指しています。
子どもたちに伝えるべきはその点のみで良かったのではないでしょうか。
3本目の動画以降は環境負荷のことや、稲の多年草化という新しい稲作の可能性を紹介するもので、次世代の農家を増やすためにも参考になる内容だと感じました。
それなのになぜ、そこに「デマ」とも言われるような内容を含めてしまったのか。
学校給食課や農政課がその部分を削除する判断ができなかったことを残念に感じます。
動画は「小川さんが育てたお米をよく味わいながら食べましょう!」という言葉で締めくくられています。
うん、それなら食べる時間をもうちょっと長くしてあげようよ・・・という何年も前からの課題も思い出す締めくくりです。
動画をちょうど見終えた頃に会議室に職員さんがいらっしゃいましたので、この有機的栽培米の提供についていくつか質問をしました。
私たちはいくつかの中学校の保護者さんや教職員からこの「動画を観ていない」という情報を得ていたので、何校で見られたのか尋ねると、「確認していない」という回答。学校給食課から各学校へ配信はしたものの、見るかどうかは学校判断に任せているそうです。担当の職員さんが足を運んだ中学校では動画を観ていたそうで、観ていない学校の存在に逆に驚いている様子でした。
生徒からは「もちもちしている」「いつもよりおいしい」等の感想を聞いたとのこと。
利用数は約6000食(教職員分も含む)。この日はおかずが魚料理でしたが、生徒が作った提案献立の日だったこともあるのか、普段の魚料理の日と比べると利用数は多かったそうです。
お米の費用は通常の倍ほどの価格だそうですが、農政課からの補助金で購入したとのこと。この辺りから「オーガニックビレッジ」や「緑の食料システム戦略」としての取り組みであることがわかります。
ただし、生産量や予算が限られているため、今後この事業を続けるとしても、実施できるのは年1回程度。全員喫食になったら実施できそうもないそうです。
そして、問題の「栄養価」「おいしい」の部分については、農政課からもチェックが入り、例の注意書きを入れることに至ったそうです。
有機米の給食への提供は昨年3月にまず田名小学校で試験的に導入されたのですが、そもそもなぜ、給食で有機米を提供することになったのかを尋ねたのですが、「今年度異動してきたので昨年度のことはわからない」というお答え。提供に至る経緯を担当者も把握していないのでは、子どもたちに何を伝えるべきなのかもわからないのではないでしょうか。
そのほか、いろいろ聞きたいことはあったのですが、10分ほど話したところで別の職員さんがやってきて「5分後からこの部屋を使う予定があるので・・・」と、質問タイムはそこで終了となりました。
時間はちょうどお昼時。職員さん用のデリバリー給食が学校給食課には届いています。
これまでも何度か、学校給食課に届いたデリバリー給食を見させてもらい、写真を撮らせてもらっていたので、この日もそれをさせてくれないかとお願いをしたのですが、課長が不在のため判断できないとのことでお断りされてしまいました。残念。
給食の写真は学校給食ブログに載せているので、そちらを見てください、ということです。
私たちは、有機給食には賛同しない考えを持っていますが、反対もしてもいません。
しかし、相模原市が有機給食の目的や果たすべき役割を明確に把握し、それを理解した生産者さんが見つけられないのであれば、現時点では有機給食は導入するべきではないと思います。
貴重な農政課の予算を有機農業拡充のために有効に使って欲しいです。
皆さんはどう思いますか?
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