《第2次相模原市相模原市立中学校完全給食実施方針》が出来ました


約一年、8回の「相模原市学校給食あり方検討委員会(以降“検討委員会”)」を経て7月10日に提出された「最終答申」を受け、相模原市は「第2次相模原市立中学校完全給食実施方針(以降、“第2次方針”)」を策定し、7月28日に公開しました。

サブタイトルは ~全員喫食の実現と食育の充実に向けて~ 。

内容は、検討委員会から出された答申と似たようなものになっています。

これまでの委員会の報告でも書いてきましたが、私たち委員の意見はそれほど聞かず、発言中に別の委員からため息が聞こえてくるような中で作られた最終答申を相模原市はそれほど練ることもせず、答申受け取りから3週間弱で方針が策定。

ちなみに前回、2015年に策定された実施方針は、相模原市立中学校給食検討委員会の答申受け取りから10ヶ月後に策定されています。

私たちが参加した検討委員会ってなんだったんだろうな・・・と、やはり思ってしまいます。1年もかける必要はなかったんじゃないかと思います。


と、なんだか暗い気持ちになってしまうのですが、気持ちを切り替えて内容を見てみることにしましょう。


まずは3ページの【給食改革の基本的方向】。

1.早期実現及び持続可能な運営 の中に

将来的な生徒数の増減にも対応できる持続可能な運営を図る。 

とあります。検討委員会からの答申にもある文言ではあるのですが、「持続可能」って生徒数の増減への対応のことだけでいいのでしょうか?「生徒数が増える中学校があっても減る学校があるから対応できる」というのが相模原市の言い分ですが、全体的には減ることがわかっています。そんな中、作られるのは大規模な給食センター。全体的に生徒数が減った時に無駄になるスペースが大きくなるのではないでしょうか。

また、機械の故障や食中毒等の不慮の事態が起きた時、給食そのものが持続不可能になるリスクが高いのも大規模センター。以前も書いたことがありますが、「早期」の捉え方も私たちとは違っている相模原市。「持続可能」もどうやら少し捉え方が違うようです。

もしご興味がありましたら、『持続可能な給食センター』でググってみてください。納得できる他市の「持続可能な給食センター」のことを知ることができます。




次は4ページ、【給食運営の基本方針】。

「給食運営」って言葉自体もよく考えるとよくわからないのですが、これから始まる全員喫食の中学校給食を子どもたちの学びに繋げるために教育委員会は何をするのか、ということの3つの柱が記されています。つまり、食育の方針のようなもののようです。


では、【給食改革】と【給食運営】それぞれの詳しい内容から私たちが気になる部分を抜粋して見ていきましょう。


6ページ

医療的ケア児等、配慮が必要な生徒への給食提供方法についてのことが記されています。これは私たちが検討委員会で発言したことや教育長との面談で伝えてきたことが一部取り入れられた内容になっています。

しかし、1ページにある「全員喫食」の脚注には以下のようにあります。

※1【全員喫食】:食物アレルギー等の生徒の個別事情に配慮しつつ、生徒全員が給食を食べること。

「全員喫食」って、実はとても難しいことなんです。だけど、どうにかしてなるべく全員が食べられる給食を提供する努力をするべきだと私たちは考えています。相模原市も定義にこのように記した以上、アレルギーやミキサー食だけでなく、宗教食等にも対応できてこそ「全員喫食」と言えるのではないでしょうか。しかし、今回出された方針には宗教食については触れられていませんでした。


7ページ

これは検討委員会の中でもいまいち納得できず、質問を繰り返してきた項目です。

相模原市の生徒の身長や体重等のデータと食生活、給食の残食等を調べて「本市の生徒にふさわしい給食」を提供するそうです。私たちも何度も「子どもたちにふさわしい給食」という言葉を使ってきましたが、ここでもやはり意味が全く違う使い方をされています。

給食の栄養基準は全国一律で決められています。しかし、体型や食生活は地域によって違いがあります。その調査、分析をして相模原市独自の基準を作ることをここで記しています。

そこまでするなら、自校方式にして各校独自の献立、もっと言うならクラスごとで基準を設けることまでしないとあまり意味がないのではないでしょうか?

他のページにもありますが、相模原市は都市部と山間部の両方を併せ持つまちです。もちろん、生活環境が違えば食環境も違うでしょう。しかし、市内一律の基準を作り「本市の生徒にふさわしい給食」を提供することが可能なのでしょうか?

例えば、調査の結果、肥満傾向であるとわかった場合、エネルギー量の低い給食が全校で提供されることになり、本来は多めに食べてほしい痩せている生徒の給食までもが減ることになります。食べる量を控えるべき生徒がおかわりをしたり、給食が足りないからと、家での食事量が増えたり・・・。

これは実際に調査が行われないとどのような結果になるのかがわからないのですが、わざわざそこにお金をかける必要性や意味が私たちには全くわかりません。

今年7月、徳島市の中学校で「肥満理由に給食熱量減らす」という報道があり、独自基準については問題視されています。

ちなみに、中学生の給食の食塩相当量の基準は《2.5g未満》なのですが、相模原市のデリバリー給食9月の献立の食塩相当量は最低が1.9g、最高が3.9gで1ヶ月の平均は2.8gです。すでに独自基準?(選択制で毎日食べない給食なのに、この振り幅があることもかなり問題があると私たちは感じていますが、これはまた別の機会に)


9ページ

コンテンツとはどのようなものを作るのでしょうか?誰が作るのでしょうか?

申し訳ないけれど、今年5月から作成が始まった「学校給食ニュース」を見る限り、、、相模原市の学校給食課に中学生が興味を持つコンテンツを作る能力があるとは思えません。では、外注するのでしょうか?食のアセスと同じく、そこにそんなにお金をかけるよりも大切なことがあるのではないかと思います。


同じく9ページ

私、この右側の枠内の文言を見てがっかりしちゃいました。

食べ残しを減らすために「生徒の嗜好を鑑み」ることのどこがSDGsなんでしょうか。

きちんとした食育がなされていて、普通の給食が提供されていれば、自然と食べ残しは減るのではないでしょうか。実際に小学校給食の残食率は5%ほどですが、児童の嗜好を鑑みているのでしょうか?

相模原市は中学校給食の残食率が高い理由の一つを「残食が多いのは生徒の嗜好によるもの」としていましたが、その名残があるように感じます。

また、SDGsって、ゴミを減らすことや環境への配慮のことだけに取り組めばいいということではありません。雇用のこと(目標5,7,8,9)、災害時の対応(目標11,13)、給食調理や洗浄の排水(目標14,15)など、給食を通じたSDGsへの取り組みはもっと多岐に渡ります。給食の可能性を舐めないでほしいです。


10ページには

給食センター配置の栄養教諭等の定期的な学校巡回により、給食指導を支援します。

という文言が2回出てきます。

これを見て私は「あれ?小学校の栄養教諭とは連携しないの?」と思ったのですが、11ページには

中学生の食育において中核的な役割を果たす栄養教諭等は、中学校の独自の取組を支援する相談機能や小学校に配置している栄養教諭と中学校の調整を行うコーディネート機能を担うことから、新たな給食センターに複数配置します。

とあります。小学校に配置している栄養教諭は現在22名。小学校3~4校に一人の割合で配置されています。その栄養教諭をコーディネートするために給食センターに栄養教諭を複数配置?今でも複数校兼務している栄養教諭の先生が中学校まで兼務しなければならないのでしょうか?それでどうやって食育を充実させるのかよくわからないのですが、きっと「コンテンツ」で平準化されるので、現場の先生の負担は増えないのでしょう。


13ページ

将来的な教育環境の変化にも適切に対応できるよう、長期的な視点の下、自校方式や親子方式等の給食提供の実施方式も含め、定期的に本実施方針を見直します。

どうにか入れてもらえた文言です。

今後も他の方式も含んだ見直しを定期的に行うとのこと。

しかし、これが入ったからといって決して喜べません。なぜかというと、前回の実施方針には

検討に当たっては、「学校給食あり方検討委員会(仮)」を設置し、給食センター方式による給食実施 7 校を含めた全 37 校の中学校において、地域に応じた多様な方式の導入による全員喫食の完全給食が実施できるよう、小学校給食の実施状況も踏まえ検討します。

と記されているのですが、この方針が出されたのは2016年。あり方検討委員会が立ち上げられたのは2022年。この間、全員喫食の検討はなされてきませんでしたし、今回の検討委員会でも「地域に応じた多様な方式の導入」は排除のための検討しかされませんでした。

方針に入れたのだから、それに則り、誠実な対応と見直しを「定期的」に行うことを今後も相模原市へ求め続けなければなりません。



以上、長くなりましたが、これでも抜粋です。

冒頭にも書きましたが、この基本方針のサブタイトルは【~全員喫食の実現と食育の充実に向けて~】。充実した食育を実現できる方針になっているかどうか、みなさんもよろしければ、方針全文に目を通してみてください。

お気づきの点や疑問点などがありましたら、私たちにお聞かせください。また、学校給食課へも意見を届けてください。

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