有機《的》栽培米は栄養価が高くおいしい?

11月のある日。

12月分の給食をそろそろ注文しようと思い、献立表を見てみると・・・

「有機栽培の市内産米を使用したごはん」の文字が。

「昨年度、3月に田名小学校のみで実施された化学肥料・農薬不使用のお米を今度は中学校のデリバリー給食で出すことになったのね。また同じ生産者さんなのかな」と、思いながら給食だよりも見てみると・・・

同じ生産者さん(小川誠さん)のお米であることがわかりました。

そして、五十嵐議員のXの投稿で生産者さんの動画が撮影されたこともわかりました。

動画撮影の内容が生産者さんのFacebookに投稿されていたので、見てみると・・・

有機農産物の長所
①健康によい(栄養価が高い)②おいしい(作物本来の味がする)


ん?

んんん?????

これ、アカンやつでは?

有機栽培の農産物が慣行栽培のものと比べて、味や栄養価が高いというエビデンスはありません。

それを学校教育の一環である給食の時間に生徒に見せることには強い違和感が。


でも、でも、私たちが知らないだけで、もしかしたら有機栽培の農産物は味や栄養価が高いというデータを生産者さんや相模原市は持っているのかも?と思い、学校給食課へ問い合わせのメールをしました。

質問内容は以下の3点。

  1. 提供されるご飯は全量が有機栽培米なのか?
  2. 献立表には「有機栽培」、給食だよりには「有機的栽培方法で育てた市内産米」とあるが、「有機栽培」と「有機的栽培」の違いは?
  3. 生産者さんのFacebookに投稿されていた写真に
     「有機農産物の長所
      ①健康によい(栄養価が高い)
      ②おいしい(作物本来の味がする)」
    と書かれたものがあるが、有機栽培米の栄養価や味が慣行栽培の物と比較して優れているとされているデータソースはあるのか?


そして届いた回答はこちら。


12月8日に中学校給食で提供するご飯は、全量が有機農業(家畜ふん堆肥の施用など)に取り組む小川誠さんの市内産米となります。しかし、小川誠さんは有機JAS認証を受けていないため、今回使用するお米に厳密な意味では「有機米」と表示することはできません。そのため、化学肥料・農薬を使用しない「有機的栽培方法で育てた市内産米」といたしました。献立表と給食だよりは紙面スペース上、異なる表現をさせていただきましたが、同じ意味で使用しております。
また、一般的には、有機農産物が、慣行農法で栽培された農産物と比較して、「健康によい(栄養価が高い)」や「おいしい(作物本来の味がする)」というエビデンスはありません。今回の小川誠さんのコメントは、栽培農家としての個人的な実感や、召し上がった方からの感想をそのまま伝えたものと捉えております。


質問の1.2.については、言葉の使い方の問題。有機JAS認証を受けていない生産物には「有機」という言葉は使えません。そこに「的」を付けるとOKになるのかどうかを判断するほどの知識は私たちにはありませんので、まぁ「何か抜け道があるんだろうな」程度で終わらせましょう。

問題は3つ目の質問です。

有機農産物が慣行栽培と比較して栄養価や味がいいというエビデンスがないということを学校給食課(=教育委員会)は承知しているということです。生産者の「お気持ち」を学校教育の場で伝えることに対して違和感や問題意識を持たないことに非常に驚きました。

また、発表資料には「子どもたちに食体験とともに、長年、有機的栽培方法を実践されてきた小川さんの取組を紹介し、食育に繋げていきます。」とありますので、教育の一環としての取り組みであることもわかります。

有機農業に取り組む方の中にも「エビデンスのないことを言うのはやめてほしい」と訴えている方も少なくありません。


相模原市は今年6月にオーガニックビレッジ宣言をしています。相模原市有機農業実施計画に基づき、有機農業の拡充を目指している中で、学校給食を普及推進の場に使うことには全く違和感はありません。オーガニックビレッジ宣言をした理由などと共に、有機栽培のメリットを正確に子どもたちに伝えるチャンスの場でもあるでしょう。

それなのに、今回のようにエビデンスがなく、場合によっては慣行栽培農家の家庭の子どもを傷つけかねないような内容と共に子どもたちに届けようとしていることに強い違和感を持つと同時に、教育委員会の無責任さに憤りを感じています。


私たちは、有機栽培が拡がることには大賛成です。日常的に有機栽培の農産物を買うようにしているメンバーもいます。だからこそ、正確な情報と共に子どもたちに伝え、学ぶきっかけにしてほしいと願っています。エビデンスのない情報(はっきりと「デマ」と言い切っている方もいます)を利用しなくても、有機栽培の価値は子どもたちに伝わるはずです。

今後、有機給食を取り入れ、拡充するつもりがあるのなら、今回のようなことを子どもたちに伝えることについては慎重に取り扱うべきだと、有機給食を望む皆さんにこそ考えていただきたいです。

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